ほむんくるす

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〜脳の中のコビトを元気に〜

一過性脳虚血発作

前回の記事の中からまずは一過性脳虚血発作について。

一過性脳虚血発作(TIA

一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack,医療者の間では頭文字をとってTIA~ティーアイエー~と呼ばれています)は一時的に脳の血管が詰まって手足が動かなくなったり痺れなどが生じ、24時間以内に収まる病態だとお伝えしました。

これってものすごい怖いことだと思いませんか?

 

どんな症状が起こるの?

多い症状を羅列します。

・手足が動かないもしくは動かしづらい(一般的に右か左の片側に起きます)麻痺と呼ばれます。

・手足が痺れる、感覚が鈍い(これも片側に起きます)

・喋りづらい、呂律が回らない。(私は滑舌が悪いだけですので心配しないでください)

・力は入るけど歩けない(歩行障害)

・急な意識の途切れ

などです。 

脳には酸素が必須

脳の1日のエネルギー消費は体全体の25%も占めます。それだけたくさん活動しているわけですね。筋肉よりもたくさん働いてます。超がんばり屋さん。

この脳が使うエネルギー、どうやって作られるかというと、脳の細胞の中にいるミトコンドリアさんが酸素を使って作り出します。

ん、酸素!?

そうです、この酸素は血液によって運ばれてきます。血流が途絶えて酸素がなければエネルギーが作れない。エネルギーが作られなければ活動できない、、そういう流れで手足が動かなくなったりするわけですね。

ちなみにこの血液が脳細胞に届かない状態(これを“虚血”と言います)が続くとどうなるか。脳細胞が死んでしまいます。これが脳梗塞と言われる状態ですね。(脳梗塞について詳しくは次回の予定です)

 

幸いにも脳細胞が死ぬ前に血流が再開通して24時間以内に再び活動状態を取り戻すこと、これが一過性脳虚血発作。脳梗塞の一歩手前です。

電車が遅延した状況だと考えてもらうとシンプルかもしれません。朝の通勤ラッシュ時に電車が遅延、会社の酸素とも言える社員が会社に来れないから仕事になりません、的な。

 

早期診断・早期治療

さてさて、でも血流が再開通して元に戻ったんだからいいじゃない。とお考えのあなた。その認識を変えさせてください!

最近の研究ではTIA後に脳梗塞を発症するリスクはとても高いとされ、TIA発症後90日以内に15〜20%、うち約半数が2日以内とされています。さらにさらに、イギリスオックスフォードシャー州の一般住民を対象とした研究では、TIA後の脳卒中発症は24時間以内に発症する確率がとても高いことを示しています。

そのためTIAの早期治療が重要視され、脳卒中ガイドライン2009では「TIAを疑えば、可及的速やかに発生機序を確定し、脳梗塞発症予防のための治療を直ちに開始しなければならない」(グレードA:行うように強く勧められる)となっています。

先ほどのオックスフォードシャー州の研究の続きで早期診断・治療により、脳卒中発症リスクを80%も低減することが示されています。

 

実際私が担当した患者さんの中でも朝手に痺れがあったけど少ししたら良くなったから仕事に行ったの。そしたら昼過ぎくらいに急に手足が動かなくなっちゃって、、ていう方もいらっしゃいました。

異変を感じたらとにかくまず病院へ行きましょう。電車が動いていれば十分な酸素社員が会社に到着しますので。

 

おさらい

・一過性脳虚血発作(TIA)は症状が24時間以内に消える

・症状は手足が動かなくなったり痺れたり喋りづらくなったり様々。

・脳細胞が働くには酸素が必要で酸素は血液が運ぶ

・なんかおかしいと思ったら病院に行きましょう。80%の低減率は伊達じゃない。

・社員を大事にしない会社なんて辞めてしまえ(完全なる私見です)

 

参考・引用書籍

・橋本伸夫監修,脳血管障害の急性期マネジメント(2014)